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ジョニー・ウォーカーがやってくる! その4
「ベル……大丈夫?」
アリスは息を切らしながら尋ねる。
「俺のことは良いから、早くアニキを助けないと……!」
ベルは再びその場に落ちた木のブロックを拾う。薄くなった土煙をかき分けるように、奴が、ジョニー・ウォーカーがやってくる。
「行かせるわけないだろう? アリス、僕はただ君達とお話がしたいだけなんだぜ?」
「信じられないわ。 だって先に手を出したのはそっちだもの」
アリスが答えるとジョニーは立ち止まり、手で顎を触りながら考える。
「ふむ……そうだったかな」
「ええ、そうよ」
「もう忘れてしまったな」
くくく、とジョニーは笑った。それから一瞬の間を置いて高笑い。
その隙をついてアリスがベルに目配せをする。ゆっくりとアリスとベルは歩き出し、互いに距離を取る。ちょうどジョニー以外の三人で正三角形を作ることの出来る位置を目指す。
ジョニーの目線はアリスを追い、そしてその足も同じくアリスへと進んでいく。
「そうだなアリス。 良いアイデアだ。 そうすれば僕の意識は三方向に散るものな」
ジョニーは歩きながら両手を開き、閉じる。
「少しずつ、君のことが分かりかけてきた」
そう呟くと彼は地面を蹴り、アリス目掛けて走り出す。
「ベル! 今よ!」
アリスが叫ぶとベルの才能が発動する。再び木片がジョニー目掛けて『追尾』を開始する。
「いいや、アリス! まずは君からだよ。 その作戦に変更はない!」
ジョニーはアリスに向かって駆け出す。その速度は木片より遅いが、確実に先にアリスに到達することの出来る速度だ。
「さあ! アリス! 君はどうする!」
「もちろん、受けて立つわよ。 来なさい!」
アリスは戦うための姿勢を取る。
「やめろ! 君の敵う相手じゃないッ!」
遠くからメイが叫ぶ。しかし、その声はすでにアリスには聞こえていなかった。彼女はかつてないほどに集中し、自身の呼吸音を聞きながらジョニーを見据えていた。
「嬉しいよ!」
そう叫びながらジョニーは左手を伸ばしてアリスに襲いかかる。アリスはその左手をかろうじて弾くが、その次にきた右手に左腕を掴まれ、『分解』される。
しかしすぐさまアリスはジョニーのその右腕を、アリスの左腕を掴んだその右腕を掴み返す。そしてここで、アリスは才能を発動する。ポケットでガラス玉が輝きを放つ。
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