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「ありがとうジョニー。 あなたが素直で、正直で、そして私をみくびってくれたおかげよ」
「アリス、何を言っているんだい? 追い込まれているのは君じゃないか」
ブン、と音がする。『自動追尾』によって飛ばされた木片の音だった。ジョニーは振り返り、左手を振りかざしそれを受け止めようとする。
が、そのブロックはジョニーの腹部に直撃する。鈍い音がしてジョニーはよろめく。ジョニーが振りかざしたはずの左手は、肘から先が存在していなかった。
「いッ……は? なんだ? なんで僕の左手が『分解』されて……」
「私の才能は『治す』んじゃなくって『戻す』のよ。 あなたが最初にベルを襲ったあのタイミング。 あの状態まで『戻さ』せてもらったの。 それから……」
アリスのガラス玉が光り、ジョニーが掴んだアリスの右腕が飛んでいく。それはベルの方向へ。既に右足を回収し、メイの元へ辿り着いたベルの方向へ。
「あなたから学ばせてもらった。 例えそれは部分であっても、触れれば才能を発動できるのよね」
「君は……アリス、君ってやつは……ふふ」
ジョニーはまた、高笑いをする。素直で、上品で、狂気じみている。
ぱっとアリスの掴んだ手を振り払うとジョニーは咳払いをしながら襟を直す。
「アリス、君、とても良いね。 君に出会えて本当に良かった」
そう告げるとジョニーは落ちた左手を回収する。彼のその姿には、もはや戦意や敵意はなかった。
「おーい、君達。 僕もう帰るから。 アリスに手、返してあげなよ」
右足を元に戻したが、未だ緊張した様子のメイとベルにジョニーは伝えると、手を開いたり閉じたりしながら、ゆっくりと歩いていく。
すぐさまベルがアリスの元へ駆けつけ、アリスの才能によって右腕を元の状態に戻す。
「ア、アリス……あの……なんだ、ありがとよォ……」
気まずそうにベルが礼を言う。
「良いのよ、でもこれで私のことはもう襲わないって約束だからね」
ベルは情けなく眉を八の字にする。
「当たり前だろォ……ほとんどあんたのおかげで助かっちまったんだからさ……」
「たまたまよ、それより私、街に……ちょっと?」
ベルは驚いたような、焦ったような様子で一点を見つめていた。彼が見つめる先で、メイとジョニーが対峙していた。
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