流れ星の夢

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流れ星の夢

 私は誰かと星を眺めていた。  夜空の(たた)えるその深い青は、世界の美しい物を全て液状にして混ぜ合わせたかのようだ。溶け切らなかった輝きが星になり、存在を主張する。そんな空を、月が気持ちよさそうに泳ぐ。  濃く深い夜が身体に染みていき、(から)の器を満たすように広がっていくのを、私は感じていた。  私の背中を刺す芝生が、夜に溶けてしまいそうな私の意識を引き留める。肉体に意識をやると左腕に痛みを感じた。おそらく痣が出来ている。 「起きてる?」  その声に、起きてる、とだけ返す私の喉はからからに乾き切っていた。口の中から微かに鉄の匂いがする。夜空で絶え間なく輝く星々を数える度、私は私の肉体をひとつずつ取り戻していった。 「今日の星、すごく綺麗ね」  私は隣に寝転ぶ誰かに語りかける。 「あ、流れ星」  私の話は、流れ星に(さら)われてしまう。隣に寝転ぶ誰かは何かを願っているようだった。流れ星はゆっくりと弧を描くように夜空を抜け、夜のもっと深いところへと消えていった。  結局私は、何も願うべきことが浮かばなかった。 「何をお願いしたの?」  私が聞くとその誰かは少しだけ笑った。笑ったように思えた。 「あのね……」
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