わたしが彼から離れた理由

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 上京し、大学へ入って半年ほどが過ぎた頃、わたしにはカレシができた。イベントサークルで知り合った違う学科の男の子だ。  告白は向こうからだった。新歓コンパの時から、なんとなくいいなと思ってくれていたらしい……。  見た目もよく社交的で、ちょっと遊び人っぽくもあったが、付き合ってみるととても優しく、わたしは彼のことが大好きになった。  それから毎日のようにデートしたり、離れている時は数分置きにメールし合ったり、お互いのマンションの部屋に泊まってほぼ同棲的な暮らしをしたり……わたし達はとても楽しく、二人の愛を日々深め合っていった。  ところが、一年ほどが過ぎた頃のことだ……。  彼の態度が、急に他所々〃(よそよそ)しくなったのだ。  デートの約束をしようとしてもバイトが忙しいからと断られるし、メールをしてもほとんど返ってこない。わたしの部屋へ来ることもなくなり、また、わたしが彼の方へ行こうとすると、やはり何かと理由をつけて断られた。  偶然、大学で顔を合わせてもなんだか素っ気ない態度でただの知り合いのよう……明らかに彼が心変わりしたことをわたしは認めざるえなかった。 「──ねえ! 開けてよ! どうして? どうして会ってくれないの!?」  ある夜、わたしは無断で彼の部屋を訪れると、なぜ急に心変わりをしたのか? その理由を問い詰めようと思った。  わたしの急襲に居留守を使おうとしたようだったが、ドアの向こう側でスコープを覗く気配からして、そこに彼がいるのは明白だ。 「ねえ! いるんでしょ? わかってるんだから。とにかくここを開けて!」  私はチャイムを何度となく連打し、時に鉄製のドアもガンガンと叩いて彼を呼び続けた。 「おい、近所迷惑だろ! 静かにしろよ!」  すると、ようやく彼はドアをわずかに開けて、顰めた声でわたしを嗜める。 「ねえ、どうしてわたしを避けるの? わたしの何がいけないの? 教えよ。そうしたらわたし、ちゃんと直すからさあ!」  分厚い鉄のドア越しに、顔も見せてくれない冷酷な彼へ、わたしは涙ぐんだ声で必死に訴えかける。
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