5人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういうところだよ! そういうとこが俺には重すぎんだよ。この際だ。はっきりしよう……もう俺達は終わりだ。別れてくれ」
「え……?」
だが、彼はきっぱりとそう言い残し、バタン!と乱暴にドアを閉めてしまう。
わたしは、フラれたのだ……あまりのショックにしばらく呆然と、わたしは彼の部屋の前でずっと突っ立っていた。
あまりにも唐突すぎて、彼にフラれたことがとても信じられない……これは悪い夢なんじゃないのか? それが現実なのか? それとも夢の中の出来事であるのか? その区別も判然としない。
次に気がつくと、いったいここまでどうやって来たものか? わたしは自分のマンションへ向かう夜の暗い道を、とぼとぼとおぼつかない足取りで歩いていた……。
こうして、彼にはっきりとフラれたわたしは、彼のもとを離れることとなった……なんて思ったら大間違いだ。
この拗れた関係をなんとかしなくては……わたしから離れた彼の心をなんとしても取り戻したい。
わたしはこれまで以上に、彼を振り向かせようと頑張った。
毎日何百通とメールを送り、朝晩、彼の部屋の前で彼の現れるのを待った。
それから、彼が喜んでくれるよう彼の好きな料理を作って、わたしの思いをしたためた手紙とともに彼の部屋のドアノブにかけておいたりもした。
ところが数週間後、わたしの家に来てくれたのは彼ではなく警察だった……。
「あなたにはストーカー規制法違反の疑いがあります。署への同行をお願いできますか?」
突然やって来た私服警官に連行されたわたしは、警察が〝つきまとい行為〟と呼ぶわたしの彼への愛情表現に禁止命令を出した。いや、愛情表現ばかりか接近することすら禁止だ。
もしも従わなかった場合は逮捕されて懲役刑にもなるらしい……。
最初のコメントを投稿しよう!