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「うるさいなあ……はいはい。今開けるって……あれ?」
すると、ようやく彼はドアを開け、外に顔を出してくれたんだけど、すぐ目の前に立っている私にはまるで気づいていない様子だ。
おそらく見えていないのだろう……そっか。確かに霊感ある人じゃないと、幽霊って見えないんだもんな……たぶん、彼には霊感ないんだろう……。
「なんだ? 子供の悪戯か?」
「わたしだよ! わたし、ここにいるんだよ?」
そこで今度は声をかけてみるが、その声もやはり聞こえてはいないようだ。
彼はきょろきょろと廊下の左右を見回し、不思議そうに首を傾げている。
せっかく誰にも邪魔されることなく、また彼に近づくことができるようになったっていうのに……彼に気づいてもらえないことに、わたしはものすごく淋しく、ものすごく悲しくなった。
でも、見えないのはなにも悪いことばかりじゃない。ドアが開けば生身の人間同様、難なく中へ入ることができる。
怪訝な様子でドアを閉める彼に憑いて、わたしも一緒に部屋の中へと入った。
それからは、あの付き合いだした頃に戻ったかのように、わたしはいつも彼と一緒にいることができた。
家にいる時も、お出かけする時も、彼がバイトしてる時だっていつも一緒。他の人には見えないから、どこへだって憑いて行ける。
もう二度と離れ離れにならないよう、イチャイチャ首に手を回して抱きついていても、ジロジロみんなに痛い視線を向けられることもない。
まあ、たまにわたし達の方を見て、真っ青い顔になってる人がいたりはするんだけど……たぶん、霊感があって視える人なのかな?
少し気がかりなのは、彼が肩コリになってしまったことだ。わたしが抱きついてるせいか、肩が重い重いとよくボヤいている。幽霊なんて体重ないと思うんだけど。
あ、それからあと困るのは、たまに電化製品に不具合が出ることかな? テレビが突然ついちゃったり、蛍光灯がチカチカしちゃったり……確か霊現象でそういうことあるとか聞いたけど、やっぱりわたしが影響してるんだろうか?
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