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ま、それはそうと幽霊になってよかったことは他にもあって、それは気づかれずにずっとそばにいれるので、彼の浮気を常に監視できることだ。
例えば合コンなんかに行っていい感じになる女の子がいれば、その子におぶさって悪寒を感じさせたり、うまくいく時は意識を朦朧とさせて、それ以上の進展がないようにしてあげる。
また、バイトしてる店に彼好みの女の子が新人で入って来た場合なんかは、更衣室やトイレでバンバン音を鳴らして、恐怖にすぐ辞めるよう仕向けてあげた。
そう……監視するとともに彼の浮気を防ぐこともできるのだ。
これが霊感のある女の子の場合は、彼の傍にいるわたしを見た瞬間に自分から離れて行ってくれるので楽でいい。
死ねば彼と離れ離れになると思っていたが、それは逆だった……むしろわたしは、幽霊になってようやく彼との楽しい暮らしを取り戻したのだ。
気づいてもらえないのはちょっと淋しいけど、それも時間が解決してくれた。
そうして彼との同居生活をしばらく続けていると、彼にも変化が現れ始めたのだ。
なんというか、彼と波長が合うとでもいうんだろうか? そういう感じになる時がたまにあって、そんな時には彼もわたしの存在に気づいてくれるのである。
「…う、うう……うぅぅ……」
ただ、彼は金縛り状態になって少し苦しそうなんだけど。
「…だ、誰だ……誰かいるのか……?」
ある夜、わたしが彼の寝顔を覗き込んでいると、目を覚ました彼がわたしの気配に気づいてくれた。
それでも初めはよく見えていないようで、わたしとしては認識してくれなかったが、より波長が合うようになってきたのか? 日が経つにつれて段々とわたしとわかるようになってきてくれる。
「……う、うぅ……ひっ! お、おまえは……おまえは死んだはずだろ……!?」
ようやく傍にいるのがわたしだと気づき、彼がひどく驚いた顔をしている。
「うん。死んだけど、こうしてあなたももとに帰って来たの!」
わたしはその嬉しさに声を弾ませて話しかけるが、やはり声はまだ聞き取れないようだ。
だが、それもきっと時が経つとともに改善されてゆくことだろう……。
そう、信じていたんだけれど……彼は、思いもよらない行動に出た。
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