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そんな日々を乗り越えてやっと解禁に漕ぎ着いたというのに、この男という奴は。
「撫子が悪い」
ベッドの上で顔を背けて不貞腐れている。
とりあえず制服のままベッドに乗らないでほしい。ていうか、いくら幼馴染とはいえ年頃の女子のベッドに勝手に寝転ぶな。
昔から部屋を行き来する仲だから大抵は許せるけどこれは看過できない。
赤葉を引きずり降ろそうと肩を引っ張ると、ごろんと赤葉が仰向けになった。
ムスッと口を尖らせたその顔をまじまじと見つめる。
「……あんたってイケメンだったのね」
「今?」
気付けば、ごろりと横にされて。形勢逆転。
「気付くの遅すぎ」
赤葉のこんな顔、見たことない──。
鼓動が速くなっていくのを感じる。
こういうのを“男の人の顔”って言うのかな、なんて頭の隅で思った。
「頑張ってるのが自分だけだと思ってた?」
唇をつつかれて、思わずカァッと顔が熱くなった。気付かれてたの、恥ずかしい。
「俺と“キス”、するために頑張ってくれたの?」
「耳元で喋るなっ……!」
しかも“キス”のとこだけ強調すんな!
恥ずかしさで目が潤む。心臓が爆発するんじゃないかってくらいドキドキしてる。
……待ってる自分がいる。
「撫子」
「……はい」
赤葉の顔が、唇が、ゆっくりと近づいてくる。ぎゅっと目をつむった。
けれどやっぱり──
「ああああ!! 可愛すぎてキスできないいぃ──!!」
「知ってた」
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