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目を開けると、そこにはか弱い乙女のように崩れ落ちた彼氏がいた……。
「いや……できないって、前はあんなにしたがってたじゃん……? 所かまわず『キスしたい』って」
「人をキス魔みたいに言わないでよ」
「実際そうでしょ」
そう──、私の『現在恋人やってます』な、幼馴染こと赤葉は半年前までキス魔だった。
学校でその噂を聞くたびに嗜めていたのが懐かしい。
「撫子が悪い」
「はあ? なんで私が」
「撫子がもったいぶるから──!」
「はあ……?」
もはや呆れて言葉も出ない。
私の頭の中で、半年前の出来事が再生され始めた。
遡って半年前のあの日──とうとう私にもお鉢が回ってきた。
「嫌よ」
「えっ」
まさか断られるとは思っていなかった、そんな顔だった。
あの様子では今まで断られたことがなかったらしい。
正直、そうだろうな、とは思っていた。赤葉は昔からモテた。モテまくった。
「私は恋人としか、そういうことはしたくない」
断っただけのつもりが、そこからお付き合いはスタート。
華の高校生。恋愛とか、そういうことに興味がないと言えば嘘になる。だから付き合うことに特別抵抗はなかった。
けど、キスは別。それからはお断りの毎日。
『口内炎できてるから』
『頬噛んじゃって』
『親知らず抜いたんだよね……』
それでもせっせと赤葉がビタミン剤やら軟膏やらを買ってくるので、断り文句も尽きてきて、最後なんかは『ごめん。2週間前だから今そういうの無理』だった。
おかげで周期を把握した赤葉が“命の母”を買ってきた時はさすがに引いた。
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