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トリートメントを流してもらう間僕は固く目を閉じていた。
こんな自分を許してくださいと――彼に対してかもっと大きな人が神と呼ぶ存在に対してか分からないけれど何度も何度も詫びる自分がいた。
と同時にどんなことをしてもこんなに愛されている自分という存在が誇らしく、人間らしい愚かな承認欲求が満たされてゆくのも感じていた。
彼が軽く僕の髪を絞り終えると、僕は仰向けの姿勢からゆっくり体を起こしてほんの少し目尻を赤くした九条さんに向き直った。
「僕があなたならきっと――」
「きっとなあに?」
「こんなろくでもない男とっとと捨ててさ、自分にふさわしいこの世のものでないほど純粋な人を見つけてる」
こんなこと言うのは僕らしくないな。
思いながら恥ずかしくなって太々しく付け足す。
「手に負えないような愛に振り回されたりなんてしないよ」
九条さんはほんの少しの間ぽかんとした表情で目を丸くして。
それで今日初めて目を覚ましたように笑った。
「何言ってるの――手に負えない愛に一番振り回されてるのは君じゃないか」
「え」
言って頬を染める僕を抱きすくめ、ようやく心を許した蕩けるようなキスをくれる。
「僕の愛しい子――愛してる」
濡れたシャツが髪が優しい熱を持って僕を包み込んでしまう。
「僕にふさわしい――この世のものでないほど純粋な子は和樹、君だよ」
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