出会い

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出会い

親友の笹山に古谷との事を話せたのは、それから3日後の事だった。仕事を終えて夜、彩音の家に笹山が泊りに来た。夕飯を食べ酒を飲み、古谷と何があったのか彩音は詳しく話す。 「何それ! 古谷先輩……可哀想!」 笹山が酒を片手に持ち、声を荒らげて言う。 「……そう。古谷先輩……可哀想なの……全部、私のわがままだから…はぁぁぁっ……最悪だぁ…古谷先輩は、ただ優しいだけなんだよ……優しすぎるんだよ…」 思い出した彩音は涙を溢れさせて言う。 「私の気持ちを聞いてくれて、避けないでいてくれて、心配して追いかけて来てくれて、しつこい私の気持ちを聞いても、「好きになってくれてありがとう」って言っちゃう……素敵な人……っ……私みたいな女にはもったいないんだよねぇ…」 「彩音、まさか、わざと古谷先輩のせいにしたの? 古谷先輩に避けさせる為に…」 笹山にそう言われて、彩音はうつむき黙っていた。すると笹山が彩音をぎゅっと抱き締める。 「彩音、本当に古谷先輩の事、好きなんだね」 「うん……好き。たぶん、先輩以上に好きになれる人はいないと思う」 「最高の恋だったね」 「うん……心から好きだった人。古谷 湊さん、最高に素敵な人だった」 笹山の胸で思う存分泣かせてもらい、彩音は泣き疲れていつの間にか眠っていた。 翌日。笹山が少し前に誘って来ていた合コンの話をして来た。彩音は大失恋をしたばかりで、新たな出会いという気持ちにはなれず、改めて合コンの誘いを断った。 だが笹山は彩音を心配しているのか「気分転換」にと合コンに誘う。 「行くだけ行って、無理なら途中で帰ればいいし、取りあえず行ってみようよ」 「途中で帰るなら、行かない方がいいでしょ。相手にも失礼でしょ」 「合コンじゃなくてただ遊びに行くつもりでいいじゃない。案外楽しいかも知れないよ」 「うーん。なんか面倒くさいんだよね…」 「そんな事言って、家にいても余計な事ばっかり考えるでしょ」 「そうだけど…」 「行こっ、行って新しい恋を見つけようよ。最高の恋じゃなくてもさ、楽しい恋もあるって」 笹山に押し切られ、彩音は仕方なく合コンに行く事にした。新たな出会いに期待はしていない。ただ笹山の顔を立てる為。笹山を心配させない為に、彩音は1歩踏み出そうと決意した。
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