プロローグ

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「じゃ、古谷先輩との噂はデマだったんだ。本命は星野部長、あっ、星野副社長だったって事だね」 笹山がモニターを見ながらそう言って、何か思いついたように彩音の方に顔を向け目を輝かせて言った。 「あの噂がデマなら、彩音、チャンスなんじゃない?」 「言ったでしょ。噂は関係ないよ。古谷先輩には好きな人がいるの。私が入る隙なんてないんだから…」 親友の笹山には、古谷に好意を寄せている事や、告白した事、「好きな人がいる」といって振られた事を話していた。だけど、古谷が好意を寄せている相手が町田だという事に気づいたものの、彩音はその事を笹山には話していなかった。 結婚の発表があった後、町田の秘書就任が発表された。重大発表が終わり、社員達は仕事を始める。彩音と笹山はオフィスを出て、休憩室に向かう。 「今日、新商品のモニターさん達が来るんだよね」 「うん。11時に1階の受付前に集まってもらう事になってるよ」 「何人だっけ?」 「今回は10人。サンプルとして商品を使ってもらって1ヶ月後、感想を聞く予定」 休憩室に入って自販機でコーヒーを買い、彩音と笹山はしばらく時間をつぶす。 「さっきの話だけど、彩音、もう一度、告白してみなよ」 笹山がそう言うが、彩音は表情を曇らせ首を横に振る。 「だって1年経っても、古谷先輩は誰とも付き合ってなかったって事でしょ。町田さんとの噂もデマだったし、好きな人がいるっていうのも嘘か、発展がなかったって事じゃない?」 「古谷先輩は嘘をつくような人じゃないよ」 「そうだけど……じゃ、発展していないって事じゃない?」 「発展出来ないって事だよ……」 「ん? 彩音、何か知ってるの?」 「ん? ううん。ただ好きな人がいるけど、告白したり何か発展するような事が起こっていないって事じゃないかな?」 「まぁ、それもあり得るね。彩音はいいの? まだ好きなんでしょ。本当に諦められるの?」 「好きだよ。あんな素敵な人、他にいないもん。でも、諦めないといけないんだよね…」 「もういっその事、新しい恋を見つけたら?」 「えっ…?」 「近々、同じ大学だった子達と合コンするんだけど、彩音も来なよ」 「私はいいよ…」 「一応、男性陣の職業訊いたら、弁護士やIT関係の仕事をしてるって言ってたし。いい案件じゃない?」 「いや、職業で人を好きになる訳じゃないから…」 「そうじゃなくて、収入はきちんとある事が重要でしょ。あとは、出会いのきっかけ。会ってみてどうなるかなんて、誰にも分かんないでしょ」 「うーん…」 「ねっ、皆には私から話しておくからさ、行ってみようよ」 「うーん……考えとく…」 彩音は気の乗らない返事をし話を終わらせて、1階に集まるモニターの元へ向かった。マーケティングに必要な商品の長所や短所、感想などを実際に使ってもらって聞かせてもらうのだ。モニターには性別や年齢問わず、会社のホームページで募集をかけ、多い時は抽選で選ばれるようになっている。 1階に集まった10人のモニターを、3階の会議室に案内し、新商品の説明をして1つずつ持って帰ってもらう。アンケートやレポートをお願いし、1ヶ月後に再度来社してもらうよう伝えた。
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