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「……すみません、お力になれなくて」
「いえ、気にしないでください。ご協力ありがとうございました」
占いをしてから、数日後。私は事情聴取に来た警官二人が立ち去って行くのを見て、ため息をついたのだった。私の一歩後ろに立っていた小春が、泣きそうな顔でこちらを見上げてくる。
「小春……難しいことわかんないんだけど。ねえ、樹利亜ちゃん。これってさ、つまり……」
「わかってても、言わない方がいいぞ小春。どうせ、大人は信じないだろうから」
「うん、わかってる……わかってるけど……」
小春が何を言いかけたか、私にはわかっている。それでも黙殺したのは、自分でもまだ信じられなかったからだ。
あの占いサイトは、先輩に教えてもらったものだった。100%当たるから、そういう名目で。信頼している先輩に教えて貰った占いなので、私もかなり信用してはいたのだ。
だから、あの占いをした日――私は小春に言ったのだ、しばらく万里乃を避けるようにと。
何故なら、万里乃の占い結果は明白だったから。彼女はハンカチが消えてしまったと思ったようだが、実際はそうではない。ハンカチが真っ黒に染まったせいで、背景に同化してしまったという方が正しいのである。彼女は目があまり良くないのでそれに気づかなかったのだろう。
黒、の占い結果には確かにこう書かれていた。
『この占い結果を引き当てた人の未来は、闇に閉ざされることが確定しています。近い未来、重大な犯罪を起こして警察に捕まることでしょう。この占い結果を引き当てた人には、しばらく近づかないことをおすすめします。ラッキカラーはありません。ラッキーフードもありません』
――まさか、本当に……。
実際、占いから四日後。万里乃は、とあるテレビ局に侵入し、とある女子アナを刺し殺そうとして暴れて、止めに入った複数のスタッフを死傷させる大事件を起こした。
その女子アナと、マリンセスのリーダーであるカノンに熱愛報道が出たばかりに。万里乃は撮影スタジオで、こんな風に喚いていたという。
『カノン君はあたしのものよ!あたしのものあたしのものあたしのものあたしのもの!あんたみたいな売女に誰が渡すものですかああああああああああああああああああ!!』
占いを信じたことは正しかったのか。
信じたならば、何故私は万里乃の危うさに気づかず、止めることができなかったのか。
――なんなんだよ、あの占い……!
恐ろしいことに。
サイトはいつの間にか消えていて、もう何度検索をかけてもヒットしなくなってしまっているのだ。
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