夏だ!草刈りだ!

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夏だ!草刈りだ!

 自己紹介が遅れました。  私、造園作業員の【フジ】と申します。  身長はなんと147センチ。  子供と見紛うちんちくりんの女性(レディー)です。  新卒からこの業界に飛び込みまして早数年。中規模造園土木会社の中堅辺りを務めております。  幼少より母の趣味園芸の影響で、人並みならぬ草木への興味を抱き、高校から大学まで造園の道へと猪突猛進。  世に云う天然お馬鹿―――否、少々癖の強すぎる性格故か、就活で散々落ちまくり卒業間近でハローワーク経由で現職場に拾われた次第です。  職場としては初めての女性職人とあって、上は色々と気を回したのでしょう。  私が最初に配属されたのは、某市の大規模公園でした。  ガチな工事現場はまだ早すぎるし、まずは仕事に慣らすという観点から始まったのですが―――、まあ、この公園が広いこと!  元々小さな山の一部だった土地を無理矢理に公園にしたような場所のため、上り下りに階段にと巡回するだけで二人がかりでも三十分は優に掛かりました。  更に園内に遊水地を兼ねる水辺があり、大雨が降れば一部が水没する場所でした。  そんな水分たっぷり栄養たっぷりな場所の所為でしょう。  雑草の伸びがえげつなく、水辺に至っては夏場の草丈が余裕で私の背を超えました。  後にここに限らず河川や水辺の草丈は尋常じゃないことを知るのですが、それはいずれのお話で…。  重量約三キロの刈払機を担いで、チップソー(丸鋸)の刃を振り回し、力技で薙ぎ倒しては背後から迫る片付け担当に追い付かれまいと兎に角、刈って刈って刈りまくる!  水辺のため、カエルもいます。  トカゲもいます。蛇もいます。  草むらなので虫も一杯です。  生き物は基本的に好きな人間です。  ですが気にしている暇はありません。  何匹ミンチにしたか、分かりません。  何か分からない物体が、靴に服に張り付きます。  顔にも飛びます。  ですが、気にしている余裕はありません。  せめて口には入らぬよう固く閉じます。  刃は回転しているので石や瓦礫にぶつかってはその破片が飛びます。  刃そのものも削れ、毀れます。  時折、鋭く痛いですが後方の手を止めないため、こちらも止まれません。  そうして、休憩時間。  片付け担当のおじちゃんパートさんが得意げにくれた飴の甘さが、汚れちまった体に染みます。  当時二十三歳。  あの頃の若さは、その飴一つで全回復できました。  さながらRPGゲームの勇者の気分です。  そして、始まる再びの草刈。  休憩中に給油と刃の状態によっては交換も済ませ、機械は万全。  体力の限り、刈って刈って刈って――――。  
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