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奥様は女神様
前回は荒んだお話となりましたので、今回は和みあるお話を少々―――。
近年では随分と減ってしまいましたが、今でも個人宅での庭木の手入れの依頼は毎年入ります。
そう言った御宅に共通点があります。
兎に角、家がデカい。そして気前が良い。
気前って何かって?
休憩時のお茶とお菓子です。
近年では、コンビニやスーパーがあちこちにできたので、小腹が空いても簡単に買いに行くことができますが昔は弁当を詰めて各々持参が一般的。
足りなくなってひもじいながらに仕事をしていたこともあったでしょう。
その名残か古くからのお得意さんは特に、食べきれないくらいのお菓子と飲みものを差し入れてくれます。
中にはお茶とお菓子に加えて、いちごやメロンなどの新鮮な果物をくださった方もいます。
乾いた喉と疲れた体にフルーツの甘味と酸味は至福です。
また、おやつに限らず、お昼に人数分のスープを作ってくれる奥様や、お昼そのものをご馳走してくれたお婆様もいました。
個人邸の依頼は新年に向けて晩秋から年末に掛けて来ることが多く、寒空の下、頂戴する温かい食べ物や飲み物は体も心も癒やされます。
感謝の一言です。
差し入れと言えばですが、これは私が勤めて四年目の時のことです。
ある地主さんが敷地内に息子さんの家を立てて、そこに新規でお庭を造らせてもらえることになりました。
その時、大奥様が差し入れにくれたのが、人数分の和菓子。
その中には私の大、大、大好物、いちご大福も!
同僚に配りながらウキウキしていたのですが、その際、自分でも気づかぬ内にスキップしてるわ小躍りまでしていたらしく、それを目撃していた同僚からは未だにからわれる事に―――……。
あまりに印象的だったのか施主(依頼人)さんにも挨拶に伺う度に「いちご大福の子」で、覚えられてしまいました。
このように、3K揃いのきつい仕事ではありますが、その分こう言った人情は深く胸に刺さります。
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