ねえ、好きなんだけど。

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ねえ、好きなんだけど。

彼と僕の、ダブル主演の映画を撮り終わって1年。 やっと公開が決まり、宣伝の時期がやって来た。 彼とは以前ドラマで共演でき、それもかなり嬉しかったが、また続けて共演が決まるなんて思ってもみなかった。 前回のドラマの時は僕の方はまだチョイ役で、だけど今回はバディ役なので、立場は昇格! 空き時間だけでなく撮影中も一緒に居られる時間が沢山あって、毎日が本当に楽しかったんだ。 撮影が終わり約1年ほど製作側の作業等が続き、やっと映画が公開される。 公開初日から数日、そしてヒットすれば暫く間を開けて『満員御礼』と、都内、地方の映画館へと舞台挨拶は何日か続く。 初日は監督と主要スタッフ全員。 地方へ何度も足を運ぶのは、監督と主演や助演俳優。 恋愛ものなら、カップルを演じる男優と女優とか。 今回は刑事もののバディだから、彼と僕。 地方への舞台挨拶は、新幹線や車中とか一緒に過ごす時間が長く、いっぱい話せる時間がある訳で。 新幹線の中で駅弁を食べてそれを片付けると、バッグからチョコやクッキーを出して彼の目の前に突き出す。 「食べます? これ美味しいよ!」 「楽しそうだな。遠足に来た子どもみたい」 そう言って彼が笑う。 彼の笑顔は大好きだから嬉しいけど、子ども扱いされた? 少し胸が痛む。
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