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すぐに大きな仕事が来る訳ではない。それは分かっていたので、目の前の頂いた仕事を一生懸命こなした。
台詞のないその他大勢。
連ドラの1回分でガヤのような台詞が一言だけの役。
主演の友人の弟。
……と少しずつ手応えを感じて来た時だった。
――そのイベントの話が来たのは……。
“ 歌と踊りはできない ”
“ それが無くても可能性を見い出せる『俳優』への道 ”
そう思って頑張ってきた。
だから、やはりそれは……。
断ろうと口を開こうとした時、それはマネージャーに遮られた。
「みんな歌手でもダンサーでもない。若手俳優とモデルの集団。
だから、有宇くんみたいな苦手意識がある子だっている筈よ。
けど、本職じゃないからって手を抜いて良い訳じゃない。
元々 得意な人もいるから、苦労はするでしょうね。
でも、貴方にとって大きなチャンスになるのよ。
ねえ、このライブの目的分かる?」
マネージャーの説得が質問に変わる。
「俳優やモデルは、歌手みたいにライブで直接ファンと接する機会がないから、そのサービスのために……」
「そうね、勿論それが大前提。
でもね、『存在を知ってもらう』って事なのよ。
これからも、たまたまテレビを観て、たまたま出てた有宇くんを見つけて貰う?
待ってちゃダメ!
“ 迎えに ” 行かなきゃ!」
「迎え……に?」
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