61人が本棚に入れています
本棚に追加
「今年イベントに出たとして、有宇くん目当てに来る人は少ないでしょうね。有名な先輩は既にファンもついてるから、そういう人が大多数だと。
でもね、その人達の何人かが、
『あの若い子、誰? 初だよね?』
『松下 有宇っていうんだって』
『へ〜、結構いいね』
そんなふうに貴方を知る。
その後、テレビや映画に出てる貴方を見て『あっ、この前ライブ出てた子!』
そうやって、有宇くんを認知していく。
そんなチャンスを駆け出しの子達に与えたい。そういう意味が大きいのよ」
深く頷く僕。
いつの間にか説得されていた。
そして16歳で初参加。
意気込んでチャレンジしてみたものの、並大抵ではなかった。
やはり、“ 元々できる人 ” と、“ できない人 ” との差は歴然。
高校時代、ダンス部だったという航輝さんは、振り付け動画を一度見ただけで、その後、ダンスのコーチが前で踊るのを見ながら、見様見真似で合わせていく事ができる。
アキさんもそんな感じ。
他の人だって、何度か繰り返すうちに形になって来る。
それに比べて僕は……。
「イントロ:右手を上、だんだん顔上げ」
「サビ:8カウント、ステップしながら両手水平に右左に」
……なんて全部覚えて、体に覚え込ませて行く……という具合だ。
今の振りに必死になり過ぎると、次の振りが飛んでしまう。
次の振りを頭に呼び寄せようとすると、今の動きがおかしくなる。
最初のコメントを投稿しよう!