だから歌とダンスはダメだって、あれほど…

6/11
前へ
/46ページ
次へ
「今年イベントに出たとして、有宇くん目当てに来る人は少ないでしょうね。有名な先輩は既にファンもついてるから、そういう人が大多数だと。 でもね、その人達の何人かが、 『あの若い子、誰? 初だよね?』 『松下(まつした) 有宇(ゆう)っていうんだって』 『へ〜、結構いいね』 そんなふうに貴方を知る。 その後、テレビや映画に出てる貴方を見て『あっ、この前ライブ出てた子!』 そうやって、有宇くんを認知していく。 そんなチャンスを駆け出しの子達に与えたい。そういう意味が大きいのよ」 深く頷く僕。 いつの間にか説得されていた。 そして16歳で初参加。 意気込んでチャレンジしてみたものの、並大抵ではなかった。 やはり、“ 元々できる人 ” と、“ できない人 ” との差は歴然。 高校時代、ダンス部だったという航輝さんは、振り付け動画を一度見ただけで、その後、ダンスのコーチが前で踊るのを見ながら、見様見真似で合わせていく事ができる。 アキさんもそんな感じ。 他の人だって、何度か繰り返すうちに形になって来る。 それに比べて僕は……。 「イントロ:右手を上、だんだん顔上げ」 「サビ:8カウント、ステップしながら両手水平に右左に」 ……なんて全部覚えて、体に覚え込ませて行く……という具合だ。 今の振りに必死になり過ぎると、次の振りが飛んでしまう。 次の振りを頭に呼び寄せようとすると、今の動きがおかしくなる。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加