61人が本棚に入れています
本棚に追加
「松下く〜ん、大丈夫?」
そんな時、ゆるい口調で声を掛けて来たのが航輝さんだった。
「すみません。全然ついて行けてなくて」
「な〜んも! まだ始まったばっかでしょ? 練習したら何とかなるよっ!」
「早水さん、スゴイですね。すぐ合わせられて」
「俺は高校でダンスやってたから。それだけだよ」
切れ長の目が、笑った途端にタレ目だったっけ? と思うくらい目尻が下がる。
「汗、身体もちゃんと拭いとかないと風邪ひくよ。この仕事、身体が資本だからね。
それに風邪で年越しなんて御免っしょ?
俺はもう一つ持ってるし、返さなくていいから」
航輝さんは笑顔のまま自分のタオルを投げて寄越し、スタジオを出て行った。
たまたま僕がタオルを忘れて、仕方なく着ているTシャツの裾で顔の汗を拭っていた事に、気付いていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!