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溢れても、ただ こぼれていくだけ
『バーター』
本来は『物々交換』の意味だが、芸能界では、
「知名度のある有名人と、知名度は低いが今から推そうとしている芸能人をセットで売り出す」
という形式の事をそう呼ぶ。
僕も、アキさんが主演のドラマ、その台詞さえないその他大勢がデビューだった。
航輝さんとも最初はそうで、彼の友人の弟役だった。
18歳になり、刑事もののバディ役に昇格した時は、とても嬉しかった。
僕だって航輝さんや先輩達のように、いつか主役を張れる役者になりたいと思ってたから……。
深夜帯とは言え主演の話も舞い込むようになり、主演じゃなくても難しい役のオファーが来ると、演技力を試されているようでワクワクした。
そしてそれを評価して貰えた時には、また一つステップアップできたような気がした。
少しずつ願いが叶って来てるというのに……
それはこういう事を意味するんだ。
『バーターの卒業』
つまり……
航輝さんや、事務所の先輩達との『セット売り』はもうない。
誰かのおまけじゃない。
共演の機会が減る寂しさと、
一人で道を切り拓いていく怖さ……。
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