5人が本棚に入れています
本棚に追加
私は必死で雪を掘った。雪を口にはんで少しずつ溶かしながら飲み、わずかに世界が明るくなることを何度か繰り返した時、私は黒土の地面に到達した。
困惑した。たしかにここに、リオーネの小屋が立っていたはずだ。だが小屋の痕跡はまるでない。小屋に使われた丸太もなにもかも。周囲を探れば、家が立っていたような窪みのようなものが散見された。そうして切断されたというよりは引きちぎられたかのような動力装置、つまりコールドスリープの外部装置があった。
一体何が起こっているんだ。
リオーネは、そしてリオーネの小屋は一体どこにいったのだ。
私は村長の家を叩いた。
「冬の間は同じ村人でも会うのは叶いません」
「あんた、リオーネの小屋の前で私と会ったじゃないか。その約束は既に反故されている。開けろ。さもないと扉を壊すぞ!」
私は斧を持ち出していた。そして斧を入り口にドカリと打ち付けた。
すると奇妙な事が起こった。家がざわりとうごめいたような、そのような妙な気配がした。
その瞬間、扉が開き村長が血相を変えて私から斧を奪った。
「なんということをするのです! 冬では何が起きても耐えると約束したでしょう!?」
けれども私はその言い回しが妙なことに気がついた。
家を壊すな、ではなく、冬を耐えろ?
「それがリオーネを失うことでもか!?」
「それは……そうです。いずれ何があっても雪が溶けるまで、どうすることもできません」
それはそうなのだろう。この深い雪を全て掘り起こすなんてことができるはずがないし、応援を呼ぶこともできない。しかし。
「耐えるとは何から耐えるのだ」
「冬将軍と、それのもたらすものです。さぁ、小屋へお帰りなさい」
村長は口を引き結び、もはや何も喋らぬという風情で私を見た。
最初のコメントを投稿しよう!