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「それでも何故、リオーネなんだ。リオーネの小屋にはそんな実など生えてはいなかった」
「先生とリオーネさんはコールドスリープを使用されたのですか?」
「それは……」
「私たちは冬の間はずっと家にこもっています。村長はお二人に眠り続けるよう、伝えたはずです。外に出たりはしませんでしたか」
「確かにそう言われたが……!」
外には頻繁に出ていた。少なくとも数日に1度は起き、外を観測していた。不要なカロリーの消費を抑えるためにコールドスリープは使用していたが、継続的に起きていたことは確かだ。
「きっと、お二人は冬の目に留まったのでしょう」
「冬の目……?
「この森では冬は全て眠りにつきます。それは動物たちも同じです。洞穴で眠りにつきます。その中で動けば、冬の目にとまります。だからやむを得ない場合以外、外出しません。外出した場合、その運命はこの村のみんなは受け入れています」
冬将軍があなたの小屋の扉を叩くかも知れませんが、それは運命なのです
村長の言葉が耳に残る。
運命。確かに一定の危険は認識していた。けれどもこんな形でそれが訪れるとは夢にも思わなかった。私はその運命というものが、人智を超えて齎されるものであるとは考えてもいなかったのだ。
けれどもここは、人智では生き残ることはできない場所だ。そんなことは私にもわかっていたじゃないか。最初から。
「リオーネはどこにいる」
「それは……わかりません。私たちは冬は家の中にこもっていますから」
「ありがとう。邪魔をした」
「バルトロー先生。先生も春までお眠り下さい、どうか」
背後からノニアの声が響いた。
「それは、できない」
春の訪れはまだ数ヶ月は先なのだ。
数ヶ月先、リオーネが生きているはずがない。けれど今ならば。
確かに冬の危険についてはよく話し合っていた。厳しい寒さと食料難。そんなことについては。けれどもこれは想定外だ。まさか本当に化け物がいるなどとは考えてすらいなかったのだ。
私とリオーネを結ぶものは雇用契約ではあるが、長年の道行で、すでにそれより深い繋がりが私とリオーネの間にある。そしてそれは、この村と冬が分かち難いように、私とリオーネの間を繋いでいる。
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