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翌朝。
リオーネにコールしたが、返事はなかった。しかし昨夜は次にいつ目覚めるか決めずに通信は切れてしまった。いつもは3日おきだ。だからリオーネもコールドスリープで3日後の目覚めを設定したのかもしれない。
外の様子を確認しようと思ったが、扉は開かなかった。昨日の勢いでは2階まで雪は積もってしまったのかもしれない。そうなると、どのみち溶けるまでは出られない。
昨日闇の中で見たものを思い出す。
木でできた巨大なゴーレムの頭のようなもの。それはあたかもウィッカーマンのようだった。古いドルイドの民話だ。木で組んだ巨大なゴーレムに人や家畜を封じて生きたまま焼き殺す。
昨夜見たのはその頭部だけだが、やけに不吉に見えたのだ。
ドアが開くようになったのは4日後。ドアを開けると空はガラリときれいに晴れて雲ひとつなかったが、地面は2階の高さまで雪が降り積り、白で染まっていた。
あわててカンジキを穿いてリオーネの小屋に急ぐ。何故ならこの4日間、何度呼び掛けども呼び掛けども、返事がなかったからだ。
そしてリオーネの小屋があったはずの場所には、何もなかった。何も。
小屋があった部分にはただ、白い雪の塊が鎮座していた。周辺の木々の高さを見れば、一定程度が雪に埋もれている。周辺も白で埋まり、地形はずいぶん変わっていたのではっきりとはいえない。けれども場所は間違いがなかった。
何故ならそこには村長がいたからだ。
「村長、どういうことですか! リオーネはどこに!」
「何故だ。よりにもよって何故彼女が選ばれたのだ」
「選ばれた⁉︎ どういうことです⁉︎」
呆然としていた村長はしまったという形に口を歪め、けれどもかぶりを振った。
「彼女は冬将軍に選ばれた。ここでは雪崩に巻き込まれればそのようにいう。誠に残念だった」
「雪崩!? 雪崩だと!?」
これが雪崩というのだろうか。まさに跡形もない。
私は村長に掴みかかろうとするのを必死で抑えた。それなのに村長は私の肩に手を置く。
「戻りなさい、戻って春を待ちなさい」
「そんなことができるか!」
思わずその手を振り払った私を見て、村長はかぶりを振り、立ち去った。
けれども私はそこを去ることはできなかった。周りの木々の高さを考えれば、たしかに2階部分は消失しているのだろう。雪崩で壊されたのかもしれない。こんな状態だ。コールドスリープも断線しているのかもしれない。だからやるべきは、一刻も早く掘り出すことなのだ。リオーネはこの下にあるかもしれない1階で未だ震えているかもしれない。
だから私はスコップを持ち出し、猛然と雪を掘り出した。
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