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13 余裕の・・・
王子宮の客室には公爵領から連れてきた専属侍女達と、護衛騎士達がカサブランカの帰りを待ち構えていた。
彼らは全員が国王ではなく、公爵家に忠誠を誓っている者たちであり、この場に置いて誰よりも信用ができる臣下である。
「姫様、お召し替えを」
そう言って侍女達にあっという間にドレスを剥ぎ取られ、入浴をさせられて寄って集って拭き上げられて、目にも止まらぬ早業でサラリとした青いデイドレスに着替えさせられ、髪をハーフアップに結い直され化粧を施されてフレデリックの待つ応接室に連行された・・・
その間、何度か質問しようと試みたが
「フレデリック殿下がご説明してくださいますので」
と全て笑顔で返された。
あれ? 皆な公爵家の者だよね~? と疑問に思い首を傾げたが、何か理由があるのかも知れないと思い、渋々ながらも応接室に移動するカサブランカ嬢。
「殿下、お待たせしました」
そう言って部屋に入るとフレデリックも着替えを済ませソファに座って紅茶を飲んでいた。
「どうぞ、座って下さい」
そう彼に勧められて、彼の正面に堂々と優雅に座るカサブランカ。
侍女や護衛騎士は部屋から全員退出して2人っきりにされてしまった。
おい、ちょっと待て! 未婚の男女を密室に置いてアンタら何処行くの!
と叫びそうになったが、そこはグッと堪えて扇を広げて口元を隠して取り繕った。
いざとなれば力尽くで王子をぶん殴って逃げ切る自信は十分あるのだから余裕綽々だ。
かなり物騒な御令嬢である。
「お久しぶりだね、カサブランカ」
「?」
「覚えてない?」
そう言って首を傾げる王子の笑顔は天使のようである。
「え~と? 失礼ながら殿下とは昨晩もお会いしたのでは?」
クスクスと小さく笑いながら、手に持った紅茶のカップをソーサーに戻し長い脚を組み替えるフレデリック王子。
「違うよ。その私じゃない」
「?」
「前世の夫だったフレディだよ忘れた? ランカ?」
『ランカ』とは、この以前だったかどうかは分からないが生まれ変わる前の名前の1つだった事を急に思い出したカサブランカ。
「え! ええええぇ?!」
眼の前の美貌の王子がクスクスと笑うのを見ながら、思わず叫んでしまう公爵令嬢であった。
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