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14 君が好き過ぎて辛い
「今迄君は過去世の記憶を思い出せて無かったから、私の事を認識出来ていなかっただろう? ずっと君が気が付いてくれなくて辛かったよ」
そう言いながら正面の1人掛けのソファから立ち上がると、広い3人掛けのソファに座るカサブランカの隣に座り直し彼女の髪の毛を一房手にとって、口付けを落とすフレデリック王子。
そんな破壊力のある顔で色気ダダ漏れの声は辞めてくださいっ!!
と叫ばなかった自分を、赤面しながら心の底から褒め称える公爵令嬢である――
××××××××××
「ちょっと! これってどういうことよ! 誰か説明して頂戴~!!」
王子宮の地下にある牢屋から女性の声が響いてくる。
お察しの通り、ヒロインである男爵令嬢プルメリアである。
昨晩のパーティーで王子を騙し悪役令嬢のカサブランカを上手いこと断罪したものの、フレデリックの口からは『婚約を破棄する』という決めゼリフは出てこなかった。
まあ、仕方が無いわね、まだまだ彼とは深い仲になっていないもの。
でもこれから陥落すればいいんだし〜
とか何とか1人でほくそ笑んでいると、王子が別室に行こうと誘ってきた。
やった、ラッキーこれで王子も私がゲットしちゃおうっと♡ 今日は勝負下着じゃ無いけどまぁいっか〜〜 ロストバージンまで秒読みだわっ♡ 大事に守ってきて良かった〜〜♡♡
と思った事までは覚えているが、その後の記憶が全く無い・・・
ふと気が付けばここに居たのである。
「煩いなあ、嬢ちゃんアンタ自分が何をして捕まったのか分かってないの?」
牢屋番が呆れ声で彼女に話しかけた。
「何よ、私が何したって言うのよっ!」
「アンタさぁ、不敬罪でとっ捕まってるってホントに分かってないの?」
「へっ?」
牢屋番が頭を掻きながら、
「自分の父親より上の爵位の貴族家のご令嬢に言い掛かりをつけるのもそうだし、王族に真っ赤な嘘をつくのだって不敬罪になるって知らないのか? 子供でも知ってることだろう?」
「え・・・」
よく考えなくてもそうなのである。
そもそも公爵令嬢を男爵令嬢が罠に掛けようと画策する時点でアウトだが、王子に虚偽の報告をして断罪させようとした事で既に罪が確定してしまうんだが、なんで気が付かないのだろう・・・
頭の中にお花が咲くという表現があるが、もはや『ヒロイン病』という感染症かも知れない。
「え、だって。私聖女だし・・・」
「嬢ちゃん、聖女はアンタ以外にもこの国にはいるんだけど、知らないのか? そもそも聖女だからって王族に嘘ついていい訳じゃあるめえ?」
「えぇっ!!」
ちょっと可愛そうなオツムの子かも知れないと、若干同情の眼になる牢屋番のオッチャン。
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