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2 ワタシの転生何回目?
1番最初であろう前世の名前なんかもうとっくに記憶の彼方に消し飛んで忘れてしまったが、多分きっと日本人だ。
色んな知識が混在する中で1番理路整然とこの生まれ変わり? であろう出来事を認識出来ている人格がソレだから。
彼女が今まで生まれ変わった中でも特筆すべきは聖王国の聖女、大国の王妃、帝国の側室そして深い森に住む魔女、世界を股にかけた女性冒険者であろう。
それ以外はご令嬢とか、町娘とか色んなヒロインやら悪女やらモブ等を間にチラホラやった――
といっていいのか気が付くとそういう立場の人間になっているので仕方なくその役をやる、という感じなのだ。
もういい加減、皇帝、国王、王子、勇者に魔王、どっかの貴族子息や悪徳神父の相手には飽きている。
たまにはいい感じで歳を重ねて穏やかな老後を迎え家族に囲まれご臨終の場合もあるが、修道院に送られ寂しく病に倒れたり、断罪されてギロチンの餌食になったり、娼館で三角関係の痴情の縺れで殺されたり・・・ いい加減に記憶を無くして、いやもう生まれ変わりそのものを無くして欲しい。
しかしどこへ苦情を申告すればイイのかわからない為、毎回目覚めるたびに失望するのは致し方ないと思うのだが・・・
しかし今回も転生なのか憑依なのかはわからないが、訳有のご令嬢になってしまったようだ。
何でこうなったかは分からないが、何度も何度も生まれ変わっているのが自分という存在である。
「あーあーあーあーもうっ!!」
ゲシゲシと一撃で崩壊したベッドの端材をシルク張りのピンヒールの踵でお行儀悪く蹴っ飛ばす赤い髪の美女。
「しっかし、誰も来ないわね」
ベッドが大破した時に結構な音がした筈だが誰も様子を見に来る様子は無いようだ。
仕方ないので鉄格子のはまった窓から外を見てみる。
「青空しか見えないわねえ」
窓の幅が横には広いが縦が短すぎて、見えるのは青空ばかりである。
「仕方ないから探って見るか~ あーもう面倒くさッ!」
いきなり美女は、石床の上に胡座を組んで座ると目を閉じた。
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