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21 悪役令嬢であ~る
「ああ、そうだ。お前例の男爵令嬢に会っとくか?」
急に思いついたようにポンと手を打つフレデリック。
「ゲームのヒロインの男爵令嬢に? なんで?」
彼は秀麗な顔に人の悪そうな笑顔を浮かべると、
「あいつ、お前を襲わせるつもりだったみたいでさ、断罪された後で移送中の馬車を襲うように暗殺ギルドに依頼してたみたいでな。まぁそれを知ったからダミーの馬車を用意して移送に見せかけてそいつらは暗部を使って捕縛しといたんだ」
ナンダト!?
「そういう理由もあってお前の身柄は、信頼してる側近と護衛だけに任せてこっそり北の塔に連れて行かせたんだ。このことはまだ国王には報告してねえんだよ。お前の意見を大事にしようと思ってな。ゲーム上では悪役令嬢役のお前が聖女を襲わせるってシナリオで、俺がそれを阻止するらしいんだが・・・・」
肩を一旦竦めておいて
「でもお前がそんなことをするわけねえし、アレは暗殺ギルドに連絡とる方法をゲーム上で知ってたらしくてな。手っ取り早くお前を排除するために利用したらしい」
そう言った後、カサブランカの真っ赤な髪の毛を人差し指に巻き付け弄びながら、反対の手は彼女の白くてすべらかな太ももをスルスルと撫でつつ、こっそりシルクの下着の中に手を這わしていくフレデリック。
・・・・見た目は完璧な王子様だが、やってることはエロおやじだ。
その不届きな手をそっとつねりながら、
「会ってみたいわねえ、その聖女様に」
カサブランカは不敵な微笑みを浮かべた。
××××××××××
王城の地下にある牢屋に足を運ぶ公爵令嬢カサブランカをエスコートするフレデリック王子と、その後ろに付き従うのはいつもの側近のノインと護衛騎士のアレンの2人組。
鮮やかな青いシルクタフタにプラチナシルバーの糸でやたら細かく美しい螺旋模様の刺繍の入ったシースラインのロングドレスはカサブランカの美しいプロポーションを際立たせて見せている。
豊満な胸をやたらと主張するオフショルダーのネックラインは彼女の艷やかな肩やうなじを丸見えにしていて、目のやりどころに困り天井を見上げる者をここまで来る間に何人見かけたか等もう覚えてはいられない位だ。
お付きの2人は規格外の色気に当てられ、心持ち前かがみになり階段を踏み外しそうで不安である・・・
しかし、これでもかというほどの大きなサイズのサファイアで作られた宝飾品で仕上げられ、厭味なくらい全身婚約者の色を纏う彼女の姿を見ればフレデリックの執着具合がどの位恐ろしいのかを一目で見て取れるため、変な姿勢になっている理由は絶対に口にできないな、と、心中穏やかではいられない従者2人である。
今日は、臣下全員を困らすようなその色気ムンムンのドレスを贈った犯人であるフレデリックの誕生祝いのパーティーであり、婚姻の日程発表の日でもあった。
その夜会も終わり、招待客も下城して静まり返った城の地下を進む4人は、1番奥の独房の前に着くと鉄格子の中を魔法灯で照らしてのぞき込む。
囚人用の簡素な白いワンピースに身を包んだ一見純情そうに見える元聖女が呆然とした表情でこちらを向いた。
「フレデリック! やっと迎えに来てくれたのね!」
と、大声を出して鉄格子に向かい主人を迎える子犬のように走り寄るプルメリア。
王族であるフレデリックが声をかける前に己から馴れ馴れしく、しかも名前を呼び捨てで大声を出し、臣下の礼もなく走り寄る姿はとても貴族の娘ではあり得ない。
「・・・・ ねえ、フレディ。この子ほんとにコレで貴族のご令嬢なの?!」
カサブランカは思わず顰めっ面になるのを止められなかった。
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