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23【最終話】マジですか?
翌朝早く王城の裏門から鉄格子のはまった窓と、南京錠がこれでもかというくらいドアに施錠された罪人を護送する馬車が静かに王国の西の端、火山地域にある罪人用労役施設へと旅立って行った。
怪我や火傷が頻繁に起こる鉱山なので元聖女の癒しの魔法は重宝されるだろう。
但し怪我人の人数は毎日半端ないが。
去っていく馬車に乗せられる時の彼女は異様なくらい口数が少なく、青い顔をしてブルブルと小刻みに震えていたらしいが確認した役人も少なかった為定かではない。
きっと己のやって来た事を反省したのだろう・・・
知らんけど。
××××××××××
更に翌日の朝、王城の正門から綺羅びやかな4頭立ての馬車に揺られて南の公爵領に出立したのは第2王子フレデリックとカサブランカ・ハインツ公爵令嬢である。
馬車を護衛する公爵家の騎士達に混じって、王家の騎士団長の息子であり王子の護衛騎士でもあるアレンとフレデリックの側近である宰相の次男坊、ノインも己の愛馬に乗って付き従っている。
どうやら2人は、公爵領に骨を埋める覚悟のようである。
国王一家に誕生パーティの開始前に挨拶をした2人の様子、特に彼女の腰に手を回すフレデリックの表情が人間らしく緩んでいるのを見た国王夫妻がいたく喜び、婚姻前なんぞ関係ない、さっさと公爵領に着いて行けとフレデリックを送り出すことを決めたのである。
当然渡りに船のフレデリックはニンマリ笑いながら了承し、困った顔ながらも喜んでいるのを隠しきれないカサブランカも国王夫妻に謝辞を述べたのであった。
「ねえ、フレディ。もしかして狙ってたの?」
「何をかな?」
「ん~~、公爵領に行きやすいように、陛下たちの前で表情を今迄出さなかったのかなって、ちょっとだけ思ったのよ」
「さあね」
ウ~ンと伸びをして、横に座る婚約者の髪を一房手にすると艶やかな赤色に丁寧なキスを落すフレデリック。
「実の両親よりも、公爵夫妻のほうに俺の素顔をよく見せてたとは思う。なんたって俺の大事な愛する人を育ててくれてる大恩人だからな」
「・・・?」
「公爵夫妻の方が俺の両親より、俺がお前にべた惚れだって事をよく知ってるって事だよ」
「それって・・・」
「結婚に反対されたら困るからいい顔しといたってだけさ」
ニヤニヤ笑う美貌の王子様。
「いい顔ねえ・・・ 何だって私には無口で表情無かったのよ」
「そりゃあお前、前世を忘れてるんだから思い出してもらうためのシチュエーション作りの為の下準備に決まってるだろ」
「・・・・ マジ?」
それには答えずカサブランカの肩を抱き寄せるフレデリック王子。
「ま、結局、俺の両親もお前のお陰で俺が人間らしくなったって泣いて喜んでたから良いんじゃねーの?」
「・・・・」
彼女を抱きしめたまま、フッフッフと頭の上で不敵に笑う王子様。
その華やかな笑顔の裏に潜む腹黒さも、一筋縄ではいかない公爵領を治めるには丁度いいか、と溜め息をつくカサブランカ嬢。
「まあ、いいわ。今生も末永く宜しくね」
「おう。任せとけ。今度は子供は3人位にしといてやるよ」
「ばか!」
フレデリックの脇に肘鉄を食らわそうとしたが、あっさり腕を捕まえられて抱き込まれた。
「愛してるよカサブランカ」
「私もよフレデリック」
そう言って。
彼と彼女は、深い口付けをした――
―了ー
『悪役令嬢と悪女は違いますが? ナニか? ~私の転生何回目?~』
by. hazuki.mikado
2022.11.20.sun
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