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4 別人格召喚
「さて、どうしたもんかしら」
王子の王族権限でここにぶち込まれたとはいえ、仮にもカサブランカは公爵令嬢であって貴族の中では最高位に座する爵位の持ち主の娘であり本来ならあり得ない事態である。
しかもこの国での公爵という爵位はどうやら王族とは血縁関係が無い、元は大部族の公王の子孫が自治領を治めるという形で構成されているようで、王国自体の成り立ちそのものが連合国家なのだ。
つまり分かりやすく言うと、公爵という呼び名の辺境伯みたいな連中がいっぱいいて、その下に侯、伯、子、男、騎士という爵位が並ぶという封建制の小国の寄り集まりで出来上がった不安定な歴史のある国なので、第2王子とカサブランカは完全な政略的契約の婚約者同士ということであり『愛とか情とか関係ねえよ同盟みたいなもんだからね♡』という仲だ。
「うん。カサブランカは中々の勉強家だね、頭の中の歴史とか覗いてもパーフェクトだわ~」
彼女自身の脳内情報から鑑みるに、婚約者に裏切られて悲しいとかは無いらしい。
まあ、今は別人格も参入してるから余計にサバサバしているのだから仕方ないのかもしれないが。
因みに夜会に来ていたのは王都を根城にしている国王派の貴族子息子女で、よくあるお定まりコースの学園のオトモダチ達のようだ。
因みにカサブランカは王子より1歳年上であり、公爵領にある貴族学院を去年卒業しているため、王子の卒業を祝う夜会の招待を受けて、公務を最速で終わらせて公爵領からはるばるやって来た。
ソレが祝の席でこの仕打ちである。
自領から連れてきた騎士達は、王城内での宿泊予定だった西の離宮に足止めされており、この状況は恐らく知らされておらず王宮の控室にいたカサブランカの専属侍女達もどうなったのか全く分からない。
「舐め腐りやがって・・・」
又もや麗しき淑女には似つかわしく無い言葉が漏れたが、この国の各公爵家の自治領は魔物が彷徨く場所であり、公爵令嬢であっても荒くれ者の騎士達に揉まれているのが当たり前。
当然何百匹も被った猫を脱げば言葉遣いは荒っぽいのがお約束。
そう、彼女は公爵令嬢という呼び名の辺境の女騎士でもあるのだから。
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