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9 突撃ヒロインちゃん
この世界の聖女は穢れが見つかれば浄化や怪我人の治癒をするために騎士団とともに出陣する存在であり教会がバックアップするだけでなく国家規模でもプッシュする存在ではあるが、最前線で働く職業婦人であって決して優遇される存在という訳では無い。
もちろん普通に婚姻も出来るし定年退職もある。
プルメリアの知っている乙女ゲームの設定はそこんところはすっぽ抜けていて、いいとこ取りの華やかな側面だけで構成されていたうえに、学生のうちは前線に出動する為の呼び出し等は控えられるため、詳しいことは知らない国民も多いのが実情である。当然プルメリアもこの内の1人である。
彼女は大して認識していなかったが聖女達は彼女以外にも数人存在していて、単に10代の者が近くにいなかったというだけで、20代やそれ以上の50歳代の聖女も王国各地に存在しており、それぞれ担当の地区の教会に在中しているためお互い交流は無い。
実の所プルメリアも卒業後は王都を中心とした教会の何処かに派遣されることが内定しており彼女の父親の爵位も低い為、職業婦人まっしぐらという立場であり王族との婚姻などあり得ないのが実情だ。
ただ聖女は魔力を多く受け継ぐ高位貴族に生まれることが多く、釣り合いの取れる爵位の高い者に嫁ぐことが多いため聖女≒高位貴族に嫁ぐ事ができるという勘違いが生まれているのも事実なのだが、聖女自体少数しか存在していないため高位の貴族、特に当主クラス位でないと知らないのが当たり前だった。
実際下位貴族である男爵令嬢で聖女として認められたプルメリアはかなり特殊な存在といえる。
珍しい下位の貴族の出身の聖女である彼女は高位の貴族子女にはない、良く言えば親しみのある、悪く言えば馴れ馴れしい態度が貴族の子息達に受け入れられ学園内で一大ムーブメントを引き起こしたのは致し方なかったのかも知れない。
これもゲーム強制力かもしれないが。
そして厄介な事に色々と勘違いしたままのプルメリアは教会の威信と王家の後ろ盾を利用しようと企んだ。
剣術の授業の真っ最中の王子に突撃し、聖女教育の妨害を公爵令嬢カサブランカにされていると直訴したのである・・・
授業中でしかも武器を扱う時間であった為流石に教師によってつまみ出されてしまったが、渋々ながら放課後に相手をするための時間を取らざるを得なくなった第2王子フレデリック。
一応彼女は卒業後は王国騎士団とともに動く戦力なのだから仕方がない。
彼は今は王族だが、カサブランカと結婚してしまうと公爵家の一員となり王都の騎士団員に対する責任は無くなる。
お察しの通り彼の卒業迄あと2ヶ月も無いのだが・・・・
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