おくすり

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「確かに幸せだけじゃ、つまらないですね」  幸福と不幸は隣り合わせ。そんな言葉が思い出される。幸福を噛み締め続けていると、いつか歯は折れてしまう。きっとそんな感じだろう。  笑い声が微かに聞こえてくる。公園の近くにあるマンションには電気が灯っていて、きっとそこで幸せなパーティーでもしているのだろう。  その笑顔が真実なのか薬の力なのか、今となってはもう分からないが。 「大岡さんは怖くなかったんですか?」 「……正直言って恐怖よりも、怒りの方が強かったです。色々な人に騙されて裏切られて、こんな世界になって、理不尽すぎるって思いました。僕を騙した人は笑顔になって僕だけ不幸のままなんて……!」  今思い返しても僕に不幸の神様が憑いてるのかと思う位沢山の人に裏切られた。  恐怖よりも疲れの方が勝っている。  まともな生活はもう望めない。  いや、望める筈も無かった。 「僕だって薬を服用したいですよ。でも諦められないんです。服用したら僕を裏切った奴らに負けた様な気がして……」 「薬を使えば幸せになれるとしてもですか?」  僕はまた黙って、答える事を諦めた。西野さんは目を細めると、ベンチに酒を2本置いた。 「まあ言いたくない事もありますよね。こんな時は酒でも飲んで忘れましょう」 「煙草も貰ってお酒まで……いや、頂けません」 「別に良いんですよ。大岡さんに出会わなかったら1人で全部消費してたんですから。それに今日はお祝いの日ですし」  僕と西野さんは押し問答を何回か続けて、結局僕は西野さんの優しさに甘える事にした。  度数強めのハイボールを開けると、細かい泡が中からどろりと溢れ出した。酒なんて何年振りに飲むのだろうと思い、鬱に繋がる要素しか無いなと思考をまた閉じた。 「じゃあこの馬鹿みたいな世界に」 「「乾杯」」
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