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「……冷たい」
僕が目を覚ました時、肩に重みと冷たさを感じた。ネバネバしてて透明な液体が肩についているのが見える。
「これって……ヨダレ!?」
「痛っ」
驚いて飛び上がると、肩に寄りかかっていた西野さんがベンチから転げ落ちた。どうやら僕達は朝までここで2人仲良く寝てしまった様だった。
「あっ……すみません」
「えっと、すみません……」
互いに謝罪を重ねるのがなんか滑稽で2人同時にプッと吹き出してしまった。昨日あれほどの醜態を見せてしまったのだ。心を縛り付けていた強がりはとっくに剥がれていた。
「頭痛が酷いです。昨日私って何杯飲みましたっけ?」
「西野さんは1本だけでしたよ。僕は3本飲んだ所で記憶が無いです」
腕時計を見ると午前9時を指していた。西野さんに仕事は大丈夫か尋ねると、「今日は休みます」と返ってきた。
「こんな調子じゃ仕事になりませんからね」
「なんかすみません……」
「謝る事無いですよ。昨日は本当に楽しかったんですから。寧ろ誇って下さい」
西野さんは雪を払い落とすと、地面に落ちている空き缶を回収してビニール袋に入れた。僕は酒の飲み過ぎで痺れた舌を水で濯いで、次いでに暖かいコーヒーを2本自動販売機で買って、西野さんに1本手渡した。
「ありがとうございます」
昨日とは違い冷静な顔だ。昨日馬鹿みたいに騒ぎ合ったのが嘘みたいな感じだ。
「……そんなじっと顔を見られると、照れます」
「あ、すみません」
西野さんが顔をぷいっと背ける。
「……あの、大岡さん」
「どうしました?」
「どうして偽名を使ったんですか?」
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