5章

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否定しないでくれ 祐介が言ったその言葉が、斎藤の何かを刺激した。それまでされるがままだった斎藤が、突如祐介の腕を掴み返すと 「俺が君の事を否定する?そんな事あるわけないだろ。俺は、君が思っている様なちゃんとした人間じゃないんだ。卑怯で臆病で、その上姑息だ。君に喜ばれようと、リオを差し向けたくせに、勝手にモヤモヤしていたり、今日だって、クリスマスに気が付いてないふりをして、君を誘えば、警戒をされずに一緒にいられるんじゃないか なんて策を弄した。告白する勇気も無いのに、君を独り占めしたい、傍に置いておきたい。そんな事を考えているようなちっさい人間なんだ。」 「斎藤さん?」 祐介は斎藤の豹変ぶりに驚き、顔を上げ、斎藤の顔を見上げる。ほんの少し視線が合うと、斎藤は困ったような、照れくさいような表情になり 「祐介 キミはやっぱり凄いよ。カッコいい。俺が飛び越えられない壁を、いとも簡単に飛び越えて、俺を救ってくれるんだから。降参だ。俺は祐介が好きだ。」 そう言ってギュッと祐介を抱きしめた。その腕は心なしか震えているように思え、その震えが祐介を逆に安心させた。
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