2章

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…やってしまった。 体育座りの膝と膝の間に頭を埋める。うっとおしいと思われたかもしれない。ご飯だって優しいから断れなくて来てくれただけで、本当は忙しい中都合をつけて来てくれたのかもしれない。可愛い女子ならともかく、何の変哲もない男子高校生と一緒にご飯とか…。楽しいわけがない。それでも優しいから断れなかっただけなのに・・・。きっとそうだ。今頃どうやって断ったら僕を傷つけないか考えてくれてるのかもしれない。戻ってきたら、我儘言ってごめんなさいって謝って開放してあげよう。 俯いて一人反省会をしていると、ザッザッという砂利の上を歩く音が近づいて来た。いつも通りのキャンプに戻るだけだ。笑ってさよならしよう。よしっと覚悟を決めて頭を上げると、そこにはバケツとビニール袋を持った斎藤がいた。 斎藤はなぜか少し照れた顔をして袋を置くと、そのまま無言で川の方へバケツを持ったまま歩いて行ってしまった。袋の中身は気になったが、勝手に見るのは気が引けるし、もう薄暗いという程度には視界が悪くなっている。川の方へ向かった斎藤が心配になって後を追いかけた。追いついた時には既に斎藤が川からバケツに水を汲んでいるところだった。 「川の水はちょっと冷たくて気持ちいいね」 そんな事を言ってバケツを川から引き上げると、そのままテントの方へ歩き出した。 火の近くに水の入ったバケツを置くと、所在なく突っ立っている祐介を手招きする。裕介が近寄っていくと、車から持ってきた袋を差し出して 「ここ花火やっても大丈夫って書いてあったから。もし君とできたら良いなと 思って持ってきた。星が出るまでの間どうだろう」 と言った。 「あ…」 ダメだ。また上手く言葉が出てこない。何か言わないと誤解されてしまうのに。さっきまでグダグダ心配してたのが、杞憂だったというのが分かって安心したのもあるが、何より斎藤が自分と一緒にできたら楽しいと想像してくれた。その上、花火ができるかどうかまで調べてくれていた。ヤバい。なんて言ったら良いんだろう。あぁ、言葉でこの気持ちを伝える術が分からない。 気付いた時には、差し出された手を袋ごとガシっと掴んでブンブンと振りながら 「やります。凄く嬉しいです。斎藤さん最高です」 そうまくし立てていた。
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