2章

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寝袋で作ったクッションを設置し、定番のココアも淹れる。今日は斎藤がいるから、奮発して大きなマシュマロ入りにしてみた。 簡易テーブルの上にカップを置き、斎藤の横に座り、サクサクとスマホを操作する。横からは興味深そうな斎藤の視線をひしひしと感じた。画像を出してスマホを斎藤へ渡すと、興味深そうにジッとと見ている。 画面には、花火で作った星の中に祐介と斎藤が映っていた。 とはいえ、花火の光が幅を利かせているので、顔はほとんど分からない。二人というのが分かる程度だ。 「こんな事ができるんだね。君は写真撮るのが得意なの?」 スマホから目線を上げて聞いてきた斎藤に、 「花火文字って結構流行ってたから。最近わりと撮ってたからできるだけですよ。あ、他のも見ますか?」 と、斎藤の手の中にある自分のスマホを操作して他の画像も表示させる。そこには星だけではなく、文字や花丸やハート等があった。興味津々で見ていた斎藤の手が、突然止まり、 「これは君と彼女?」 と、赤いハートの花火文字の中心に、一緒に映っている二人を指して聞かれる。ブンブンと頭と両手を同時に振って 「違います 違います。友達とその彼女です。僕彼女居ないんで」 驚き過ぎて少し大きめの声になってしまったが、勢いよく否定した。彼女が居ないことはそんなに力強く宣言するようなことでもないのだが、斎藤に誤解されるのはどうしても嫌だった。 「そうか」 そう呟く斎藤の声音からは、特に何の感情も受け取れない。特に興味は無く、なんとなく聞かれただけなのだろうと思うと、少しガッカリしてしまう。 「…あの、斎藤さんは そこまで言いかけた時、通知音と共に祐介のスマホの画面にメッセージが表示された。 『小野さんとどうよ?まさかもうキスした?』 智樹からだ。通知音に誘われて斎藤も無意識にスマホに視線が移っており、眼鏡の奥の瞳が、少し見開かれている。これは絶対斎藤に見られた。もう手遅れだとは分かっていたが、少々乱暴に斎藤の手からスマホをひったくると、急いでメッセージを画面から消す。そして聞かれてもいないのに 「小野さんっていうのは、高校の同級生で、皆で一緒に夏祭りに行った中の一人で、ただそれだけなんです。彼女とかそういうんじゃないし、二人で会ったりとか、遊んだりとかすら無いんで。って。こんなことどうでも良いですよね。」 と、早口で必死に否定する。
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