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3章
「盛岡、後で進路指導室に来いよ」
ホームルームが終わり、教室内がザワザワと騒がしくなっている最中、担任がそう言い教室を出て行く。すっかり帰る準備を終え、祐介の傍に来ていた智樹がさも意外だという様子で
「祐介が呼ばれるって珍しいよな。何の問題も無さそうなのに。終わるの待ってようか?」
と聞いてきた。祐介は少し考えていたが、思い当たる節があったので
「あー…いや、良い。先帰って。また明日な」
と、肩にかけていた鞄を机に下し、智樹に手を振ると、その足で進路指導室へと向かった。
「失礼します」
ガラガラっとドアを開け、中に入ると、窓のそばにある長机の前に担任は既に座っており、机を挟んで向かいの椅子に座るよう手招きされた。机の上には見覚えのある紙が束になって置いてある。
「盛岡さぁ、夏 何があったの?」
机に置かれた束を手に取り、ペラペラと捲りながら担任が聞いてくる。どうやら紙の束は、今までの模試の結果の様だ。
「別に何も無いですけど…」
あまり興味のない様子で応える祐介に、担任は少しだけ面白く無さそうな顔をしたが
「そぉかぁ?英語と数学だけ凄く良くなってるじゃん。前から思ってたけど、志望校さ、一つ位はチャレンジ校に差し替えてみないか?勿体ないよ」
そう言うと、ズイっと模試の結果を祐介の前に押し出し、指で差し示しながら、少し身を乗り出し気味で担任が打診してくる。やっぱりか。予感的中というやつだ。
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