3章

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「志望校にこだわりは無いので、変えても良いんですけど、よく分からないんですよね。特に行きたいとことか無いし。今出してるのも、無難で近場なとこ選んだだけなんで」 本当の事だ。平凡な中身と頭の僕には、将来への強いこだわりなど特に無い。強いて言うなら、「こだわりが無いなら、とりあえず大学には行っておけば良いよ。」と両親が言ってくれたので、ありがたく行かせてもらう事にしたけど、少しでも負担をかけたくないと思ったから、近場でなるべく授業料のかからないところを選んだだけだった。 「先生はさぁ、夏に何か目標ができて頑張った結果、伸びたのかと期待したんだけど、違ったのか。まぁでもせっかくなんだから、ちょっと親御さんとも話して考えてみろよ。お前の家、県外進学でも大丈夫なんだろ?」 そう。随分前に県外に進学しても良いとは言われている。ただ、祐介にその気が無さそうなのを見て、最近ではもう何も言ってこないだけだ。目の前に差し出された模試の結果をチラリと眺め、視線を窓の外に移す。雲一つない良い天気で、まさにキャンプ日和だ。…斎藤さんは元気にしてるのだろうか。 「まぁそうですね。ちょっと話して考えてみます」 考えるという祐介の答えに安心したのか、 「おぉ。何かあったら相談に来い」 と、いたくご満悦な様子で担任はさっさと腰を上げると、 「早く帰って話し合えよ」 と言って、手早く資料をまとめると、祐介を置いてさっさと出て行ってしまった。
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