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「志望校ねぇ…」
一人残された進路指導室で、最後に渡された担任お勧めの大学リストをぼんやり眺めていたが、偏差値と学校名 学部 だけが目に映るだけで、何も頭には入ってこない。
あのキャンプの後、斎藤は約束通り家に勉強をみに来てくれた。それに加えて、頭の良い斎藤に失望されたくないという、祐介の小さなプライドから、斎藤が来るまでに必死で勉強もした。だから、夏休みの後半は自分史上かなり勉強を頑張ったのだ。実際斎藤も、
「君が必死でお願いするから、どれだけヤバいのかと思ってたけど。一体どこを受けるの?」
と聞かれたほどだ。祐介が志望校を答えると、苦笑交じりに、もったいないから違う学校も考えてみたらって言われたっけ。
背もたれに体重をかけて思いっきり伸びをする。
そうだ、家に帰ったら、斎藤さんに相談してみようかな。
勉強を見てもらってる間に色々話もして、随分仲良くなったが、かといって何も無いのに連絡するわけにもいかない。これはいい口実だ。
後ろに倒れそうなほど体重をかけていた椅子から立ち上がると、
「ありがとうございました」
と、誰も居ない進路指導室に声をかけて出ていく。
早く相談しなくては。教室に戻り、ひったくるように鞄を肩にかけると、急いで学校を後にした。
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