3章

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「全然待ってないです。あ、いや、待ってたんですけど、大丈夫です。待つの好きなんで」 変なテンションでおかしな返事をしてしまう。斎藤相手だと、なぜだか変なテンションになってしまう事が多い。その様子に、スマホ越しに斎藤がクスっと笑う吐息が聞こえた。電話越しだと、すぐ近くに聞こえるからか、耳がくすぐったくて恥ずかしい。鏡を見ると、日焼けが少し落ち着いてきていたはずの肌の色が、また少し赤くなっている気がした。 斎藤に今日担任から言われたこと、そして、自分が思っている事を話してみる。フンフンと相槌を打ちながら聞いていてくれたが、ひとしきり祐介が言い終わると、 「特に目的が無いのであれば、可能性を広げるっていう意味で上を目指してみるのはありなんじゃないか。あと、大学にもカラーがあるから、学祭やオープンキャンパス行って合いそうなとこ探したり、住んでみたい土地で探すのも良いかもな」 そんな答えをスラスラと返してくれた。 「住んでみたいとこや自分に合いそうなとこですか…でも、実際そういうのって行ってみないと分からないですよね…。ちなみに斎藤さんが住んでる所ってどうですか?」 今住んでいる所に格段の不満も無ければ、他に行きたいと思う場所も無い祐介には、興味深い場所は特に無かったが、斎藤がどんな所に住んでいて、どう思っているかは、知りたいと思った。
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