3章

11/25
前へ
/96ページ
次へ
待ち合わせは大学の校門前で13時。万が一を考え、少し余裕を持った待ち合わせ時間にしていたので、きっと30分位は早く着けるはずだ。早く着いたからといってすぐに会えるわけでもないのは分かっているのだが、それでも先を急いでしまうし、自然と顔がゆるむ。 地下鉄に乗り込むと、座席にはまだ座れるスペースがあったが、あえて座らないでつり革を掴んで立った。すぐに着くわけではないのだが、座るほどの気分的余裕は無かった。車内には、大学生と思われる人達がたくさん乗っており、斎藤ももしかしたら、同じ電車に乗って通ったりするのだろうかと妄想するだけで心がソワソワする。 電車を降り、大学に近づいていくにつれ、暑くもないのにじんわりと手に汗がにじんでくる。徐々に人通りも増えて来て、どうやら随分と賑わっている様子だ。校門の前には、待ち合わせをしていると思われる人も何人かいたが、斎藤の姿はまだ無い。それもそのはず、約束の時間までまだ30分もあるのだ。 無意識に急ぎ足になっていたからか、脈拍がいつもの1.5倍位の速度で打っている気がする。落ち着け 落ち着け。そう思い、門の前で立ち止まると小さく深呼吸した。 このままここで待っていた方が良いんだろうけど、折角だから中に入ってみようかな。途中で会えたら、ラッキーだし、もし会えなくても、時間にはここに帰ってくれば会えるし。 そう思い、門の中に足を踏み入れると、そこはチラシを配っている人たちや、勧誘の声、学祭を楽しみに来た一般の人や学生が入り混じって、なかなかカオスな状態だった。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加