昔の光

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「どうしたんだ櫻井君、何だかひどくやつれているようだが」 食堂で、たまたま出くわした岡野君が心配そうに私に尋ねた。 彼は、この4月に別の部署に異動になっていて、久しぶりの再会だった。 「いや、あの件で」 「おおそうか、君はまだあそこにいるんだったな。その後どうだい」 「…まあ、見ての通りさ。 あんな若造でも出来るのに…一体なぜ」 「ばかをいっちゃいけない。 櫻井君、あれは天才だ、 僕や君のような凡才が敵うわけがない。 だから僕は進言したのだ。 君らのところも、はやく自分達で作るなんてバカな真似はやめて、彼のような人物を育てていくよう、方針転換すべきだ」 そういえば、彼はあの日の以来、そういって曲づくりを辞めてしまったのだった。 それもあり、やる気がないと見なされて、この春部署異動になっていたのだった。 くそ、くそっ……! 誰が凡才だと? 負け犬の遠吠えのくせに! 私はさらに曲づくりに熱中した。 何としても名曲を生み出し、上司を、岡野君を、そして、あいつを絶対に見返してやる。 しかし、ようやく上司に認められて決裁が降りた曲さえ、ほとんど使われることもなく、ただ作っただけに終わってしまった。
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