昔の光

4/25
前へ
/25ページ
次へ
なんだ…これは! その時の衝撃は、今でも忘れることができないものだった。 私がこれまで聞いてきたような、西洋クラシックのリズムを取り入れ、それでいて、物悲しい情緒や湿った情感は間違いなく日本のもの。 「荒城の月」 の題名に、旋律(めろでぃらいん)と詩がマッチしていて、閉じたまぶたの裏側に、かつての勝利に花見盃を酌み交わした武将達の情景と、今、荒れ果てた城の景色が次々と浮かんできて─── 「あらまあ、あなた。どうなすったの?」 気がつけば滂沱(ぼうだ)の滝のような涙を流して、家内に笑われてしまった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加