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とうとう、念願のその日がやってきた。
「彼は今、専修部2年にいる。十五の時からここで学んでいる秀才様だ」
東京音大に向かう間、岡野君は仕入れてきた情報を逐一話してくれた。
「なかなかの色男らしいぞ。テニスもやっていて、そちらも中々のものだそうだ。彼が試合に出る日は、女学生の黄色い声が絶えないんだと」
へえ、そうかい、ふうん。
などと気のない相槌を打ちながら、逸る気持ちを抑えきれず、私はどんどん足を早めていった。
実際、そんなことはどうでもよかった。
一刻も早く、その男に逢いたかった。
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