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俺のしでかした事は極度のストレスから来る突発的なものと判断された。
親はそれで安心しただろうし、学校も圭とミツ以外の生徒は俺がそんなことをしでかしたなんて知りもしない。教師もその話題に触れることは無かったけれど、教師不在の特別教室はしっかりと施錠されるようになってしまった。それに関しては無関係の生徒達には悪い事をしたと思う。
夏希の通夜には真っ黒い喪服に身を包んだ圭とミツの姿があったけれど、俺等家族に黙礼するに留めて何か言葉を交わすこともなかったし葬式には来なかった。
制服を着てこなかったのは多分、圭から俺への気遣いだろう。今回の件はワイドショーなんかでも取り上げられたし、俺の学校がバレないように配慮してくれたんだって思った。
葬式から数日間はバタバタしたけれど、その時間が過ぎてしまえばなんてことはない。
いつも通りの日常っていうのは当たり前に迫ってきて、夏希の死に向き合いたくない俺はそのいつも通りの日常に無理矢理逃げ込んだ。
妹のダメージはただでさえ酷かったらしくて、そこに俺があんな事をしたもんだから葬式が済んでから寝込んでいる。
こちらとしても居心地がいつにも増して悪いから、家から逃げるように登校することにしたわけだけど、学校に行くのは憂鬱だ。
そりゃああんなことをしでかしゃ誰でもそうだろう?
重い足を引き摺って入った教室で俺を迎えたミツがあまりにいつも通りだったから、肩透かしを食らったようにあっけに取られた。
それも俺の為の気遣いでしかないんだろう。
そんなことは言われなくとも理解る。
ミツも圭も俺が思う以上に気遣いの出来る大人だったってことだ。
「おー、千春やん」
「おう」
「目の下クマ出来とんで。ちゃんと寝ろ~?」
「そんなんあるかぁ?」
「二匹居座っとるな」
周りからはまた下ネタ系の話が飛んできて、そんなの見てないって笑いながら席に着く事に成功した。
クマというか、血色が悪いのは確かだから先手を打ってくれたおかげで変な誤魔化しをしなくて済んだのは有難い。
元々がやる気とやらと無縁の生活をしていた俺は夏希の一件で更にやる気というか、生きる気力ってやつと縁遠くなった。
バンドにますますのめり込んで、これでもかってほどライブをこなした。インディーズばっかりだけどサポートにも入って、お声が掛かればどこへでも顔を出した。
そうこうしていたらビッグネームからサポートの話を貰って、有難いことに本格的なライブに参加することも出来た。
バイトも継続していたし、道場へも通った。
忙しくしていないとどうにかなりそうだったから無理矢理予定を詰めたんだけれど、この時にギターと向き合って色んなバンドから吸収した知識は俺の人生にとって確かな血肉になった。
あと、ミツな。
俺の精神安定剤とでもいうように、学校でミツの顔を見られるのが嬉しかった。
卒業すると東大を狙っている圭は上京してしまうだろう。そうしたら、圭ともミツとも会えなくなるんだろうってわかっていて、なるべく考えないようにして過ごしている。
俺を殺すのは圭の役目みたいな事を言っていたんだから、俺の事も東京へ連れて行ってくれないもんだろうか。
けど、金が掛かるな。
親は大学には行かしてやるって言っていたけど、今もそれは有効だろうか?
それには上京に掛かる諸々の費用は入っていない気がした。
バイトで稼いだ金はバンド活動に消えているし、上京ってまずは住む所の確保だろ?
そんな金は無い。
現実はわかってるけど、ここでただ腐っていくのは嫌だった。
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