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で、結果。
親からまさかのOKが出てしまった。
しかも、圭達と同居するって話したら菓子折り持って挨拶に行くとか言い出して必死で止めたけど、あの時に俺を助けてくれたふたりに対して親からの信頼は絶大だった。
「ほんまにええの?挨拶しとかないで。アンタまた迷惑かけるん違うの?」
「またて……」
「前に倒れた時もあの子達救急車呼んでくれて、病院から家まで背負ってきてくれて、もう二回も助けられてるのよ?住む所て簡単に言うてもお金かかるでしょ」
「それな。俺も金払うて言うたけど、無理矢理引っ張りこんだからとか何とか言われて受け取らんて」
「そんなら食費出すわ。何も出さないのは肩身狭いでしょ」
肩身が狭いとかって問題でもないんだけどな。
多分、圭もミツに片想いしてるはずだから俺みたいな言うたらライバルが一緒に住んでいいものかと思うんだけど、ミツは一緒に住む気満々だし、言い出しっぺの圭は今更やっぱ無しとは言えないだろう。
もうひとつ。
すっかり忘れてたけれど、俺は受験勉強ってものをしてこなかった。東大とやらがどれほどの難関校かは知らんけれど、まぁ音に聞こえる限り舐めてかかったら返り討ちに遭うのは確実だ。
ミツは圭が行くって言うなら絶対に同じ大学へ行くんだろうから、俺も本気を出すしか無いな。
負ける戦いはしない主義とか言ってられない。
取り敢えずミツと圭に相談して、今から塾へ行くなら過去問を片っ端からやっつけた方が早そうだって話になった。
「これ俺の使ったやつやけど、過去何年か分のやつ」
「おー!助かるわ」
「あと、こっちは圭が抽出した問題な。よく出るパターンが……」
めっちゃくちゃな量を寄越されて、学校の休み時間や家での自由時間は全て問題を解く時間に消えてしまった。
周りは今更やっても受かるもんかと冷ややかだったけれど、ミツと圭は俺に解き方のポイントやら覚えとけばいい範囲と要らない範囲を丁寧に教えてくれた。
今までの基礎がそこそこしっかりしてるもんだからまぁ、どうしても解けないって問題は無かったし、社会科や理科系なんかは今までの応用でどうとでもなった。
うん。
真面目にやってて良かったわ。
いやぁ、俺って天才と違うか?
見事にサクラは咲いて冷ややかだった周りや内心どうせ落ちると思っていたであろう両親の度肝を抜いた。
圭とミツは何も驚かずにおめでとうって言葉だけをくれた。
俺が落ちる可能性について考えなかった訳では無いだろうに、そんなことを微塵も滲ませずに上京のスケジュールなんかを話してくる。
「一緒に住むマンションなんやけどな、学校にそこそこ近い下町になったで」
「なった?」
「圭の実の親が手配してくれとんねん」
「なんやそれ」
圭は口を真一文字に引き結んで絶対に話したくないオーラを纏って俺とミツを真っ直ぐ見つめている。
なんていうか、連れて行ってやるから細かいことには目を瞑れって感じ?
実の親って言い方で、そういやこいつら家庭環境が複雑だったなって思い出した。だって、ミツが圭の弟なんだからそりゃそうだろ。見るからに似てないと思えば血の繋がらない元兄弟ときたもんだ。
「で、部屋なんやけど六畳間と八畳間しかないらしくって」
「俺相部屋で構わんぞ」
どう考えても圭の親が圭が八畳間で、ミツが六畳間を使うようにと考えて用意した物件なんだろうし。
俺が転がり込むのなんか想定外だっただろう。
あー、高校に転校してきたミツは圭の一人暮らしのこの家に転がり込んだんだから、二回目だな。
こうなると嫌がらせみたく住人が増えてくなって思われてしまったかもしれないな。
「それなんやけど、俺と圭が相部屋んなるから」
「はぁ?家主差し置いてそらないやろ」
こてんと首を傾げてからぽんっ!と手を打った。
「家主て圭か!」
「他に誰居んねん」
「そらそうやな」
「家主てか主や。俺の生殺与奪権握っての圭なんやから」
言ってやったらびくん!と身体を震わせた。
だって、あれはそういう意味だろ?
「……そんなもん握った覚えなんかないけども」
「軽くポイ捨てすな」
「してへん」
「俺を殺すのお前なんやろ?」
しくじったって顔すんなって。
一回口に出してしまったらそれはもう飲み込めないからな?
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