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体験談Ⅲ
「あのマンション。活気がなくなっちゃったわね」
ある日、母が言ったその一言で私はふとある男の子のことを思い出しました。
あれは私が小学生の時。
当時、我が家の向かい側にはとある会社の寮がありました。メインの道路から一本裏に入った住宅街ということもあり、目の前の道路では同年代の寮の子供達がよく渡り鬼をして遊んでいたのを覚えています。
その頃、私は越して来たばかりで近所に友達もいなく目の前で楽しそうに遊ぶ同年代の子供達に惹き付けられるように近づいていくと女の子が声をかけてくれました。
「一緒に遊ぼう」
それがグループのリーダーAちゃんでした。
当時人見知りだった私は内心では喜びながらもなかなか中に入れずにいました。そんな私に頻りに声をかけてくれたAちゃんのお陰で、いつしかみんなとも仲良くなり学校から帰ってくると寮の子供達と家の外で遊ぶのが毎日の日課になっていました。
私より三つ年上でみんなのお姉ちゃんのようなAちゃん。そしてAちゃんと同級生のBちゃんと私より三つ年下のBちゃんの弟。そして、私の一つ年下のCちゃん。
たまにAちゃんが友達を連れてくることもありましたが、主に五人で遊んでいました。
ある日。遠くからこちらを見ている女の子の存在に気づいた私はAちゃんに聞いてみると……。
「あの娘とは遊ばない」
Aちゃんは常にグループの主導権を握っていました。何して遊ぶか。誰を呼ぶか。優柔不断な私は決めてもらう方が楽だと思っていましたが、みんなもAちゃんには何も言いませんでした。
今思えばお父さんの役職が他の子より上だったのかもしれません。子供達も、たまに顔を見る親達もAちゃんに遠慮しているようでした。
当時の私は理由もわからず不思議に思ったままに、Aちゃんに理由を聞きました。
「どうして、遊んじゃダメなの?」
「あんまり好きじゃないから」
そう言ったAちゃんに子供ながらに嫌な気持ちになったことを覚えています。そのうち、その女の子の姿を見ることはなくなりました。そのことをBちゃんに聞いてみると……。
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