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体験談Ⅰ
__これは、私が四歳の頃に体験した話です。
いつものように畳部屋に布団を敷いて、両親と川の字になって寝ようとした時でした。
母が電気を消し暗くなった部屋で目を閉じると瞼の裏には無数の光が映り、それは暗闇に浮かぶ銀河のようでとても綺麗だったことを覚えています。
__しかしその日は、いつもとは違いました。
瞼の裏には暗闇しか映らず、おかしいと思った私は暫く瞼の裏を眺めていました。
すると突然、暗闇の中に佇む人影が見えたのです。
驚いて目を開けるとそこにはいつも通り、見慣れた天井があるだけ。
しかし、もう一度目を閉じるとまたいるのです。微かに近づいてきているような気がして怖くなった私は母を起こしました。
「目を閉じると人がいるのっ!」
そう訴えながら泣き出した私に、母は驚いた顔をしていました。
しかし、瞬きをするその瞬間にも人影が近づいてきていることがわかるのです。その影は何故か……。
「男の人! 男の人がいる!」
男性だとわかりました。
パニックになり泣き出す私を、母は抱きしめながら大丈夫だと言いました。
その瞬間、また目を閉じてしまった私は男の格好に違和感を覚えました。
その男は全身真っ黒なのにマントをつけているのがわかるのです。私にはバッ○マンのように見えました。
母はずっと私を抱きしめてくれていました。しかし男は私の瞼の裏に佇んだまま動きません。
その日は眠ることもできずにいましたが、夜が明けると不思議と瞼の裏の男は消えていました。
それから大人になった私は母とそのことを話したのですが、そこである事実を知りました。
__私の父も私の叔父(母の兄)も幼い頃に同じ物を見たと言うのです。
偶然にも一人っ子の私。一人っ子の父。そして長男の叔父。
長男長女が同じものを見ているというのはどういうことなのでしょうか。
そして叔父は心身ともに体調を崩して亡くなりました。私も、精神的に不安定な日々が続いています。
しかし父だけは健全なので、関係性があるかはわかりません。
それでも母は、これを「長男長女の呪い」と呼んでいます。
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