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ちらっと病室を覗いて「ちょっと早いけど今日は私、もう帰るね」と母に声をかけました。
でも、母はその時すやすや寝息を立てていたので、あえて起こさずに病室を出たんです。
起こして声をかけて、不機嫌なのを気取られても困るしな、と思ったから。
明日また会えるし、わざわざ起こさなくてもいいよね?って。
けど、あとから思えば意地でもさよならを伝えるべきだったんです。
どんなに気持ちがささくれ立っていても、母とちゃんと話せばよかった。
明日の保証なんて、元気な人が相手でも絶対じゃないのに。
この日、お見舞いに行ってすぐの私に母が告げた「おしっこが出ない」と言うのは、実は死に直結する情報だったのです。
夜中にメールで看護師の友人へモヤモヤを吐き出すついで。
そんな話をしたら、「それはまずいかも知れない。おしっこが出なくなると一両日中に尿毒症で意識がなくなってそのまま……な可能性が高いんよ。いつでも病院からの連絡が受けられるようにしとかんといけんよ?」と言われて。
嘘!となった時には後の祭り。
実は夕方母が眠りに落ちて以降、誰ひとり母と話せていなかったのです。
思えば夕方にスヤスヤ眠って見えたのも、昏睡状態におちいる手前だったのかも知れません。
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