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母が亡くなった後、看護師さんが母の遺体を綺麗にして下さる間中、私は母の傍を離れることができませんでした。
一緒に病魔と闘ってきた戦友(?)として、母のこと、最後まで見守りたい、って思ったからです。
頭の中ではそんな風にクリアな思考で母のことを見守る自分がいて……。でも表に出ている自分は看護師さんがして下さる全てのことを「嫌だ、嫌だ」と否定する人格で。
嫌だ、嫌だ……と繰り返しながら母の傍から離れなかった私、周りからかなり心配されました。
でもそうやって心配されてる自分を、やはりもう一人の自分が頭の中で冷静に受け止めていて……。みんなの声もちゃんと聞いていたんです。
でも外界から隔絶された状態で、狂ったように泣き叫ぶ自分の影に隠れていたくて、冷静な自分を表に出すことを頑なに拒んでしまいました。
そんな私にとって一番嫌だったのは、身支度を整えた母が霊安室に連れて行かれる時でした。
霊安室みたいなところに、どうして母を連れて行かなくちゃいけないの!?
頭では亡くなったからだよ、と理解している自分もいるのに、やはり表に出ている自分はそれを許すことが出来なくて。
看護師さんが搬送なさる母の遺体の後を、幽鬼のようにつき従いながらうわ言のように「嫌だ、嫌だ。何でそんなところに連れて行くの? やめてよ。病室に戻してよ……っ!」とつぶやき続けていました。
色々冷静に受け止める自分を表に出すのが本当に嫌で……駄々っ子のように「嫌だ嫌だ」という言葉を繰り返しながら……。
それでも母の死が受け入れられなくてあの日の私は本当におかしかったと思います。
その日の夕方に母、家に連れ帰りました。
6月14日に一時外泊をして以来の、無言の帰宅です。
放心状態の私は冷たくなった母のそばにずっと寄り添ってぼんやりとして過ごしました。
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