隠し撮り

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 まぁとにかくそんなだったので、母が癌になったと分かった時、私、もっともっとたくさん〝生きている母の姿〟を残しておきたい!って思ったくせに、それをうまく切り出す方法が見つけられなくて歯噛みしたんですよね。  普段からしょっちゅう両親にカメラを向けているようなタイプだったならまだしも、私は基本犬猫文鳥フェレットにしかカメラを向けない奴だったから。  今更「お母さん、写真撮るよー」とか「動画録るね♥」とか言えるはずがなくて。  苦肉の策で犬猫にかこつけて、彼らと触れ合っている母の姿をまるで隠し撮りでもするようにカメラに収めていきました。  気分は隠し撮りだから……基本動物たちが主役な画面の中に、母の姿がコソッと写(映)っている。  そんなのばかりが残りました。  だからね。  撮影者である私は当然母と一緒に画面に入れなかったし、父もほとんど画面の外で。  みんな漠然と母の命の終わりを意識していたくせに、それを表に出すのはタブーだったから……。  もっともっとちゃんとした家族写真を残しておきたかったな、と今でも心の片隅にわだかまっています。  余命宣告って……残酷だけれどそれを乗り越えた先でしか手に入らないものも確かにあって。  お医者様に言われたわけではないけれど、お友達から言われた「3ヶ月が勝負」が常に心の片隅にズン、と重くのしかかっていたのを覚えています。
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